コロナで1億総リストラ時代へ

2020年の初頭から、世界中の誰もが予想していなかった規模で、コロナウイルスの感染拡大が発生しました。200万人以上の人々が亡くなり、その加速度的な感染を食い止めるための対策として、各国政府は自国民に外出禁止を強制するロックダウン政策を採用しました。

その影響は経済活動にまで及び、企業はリモートワークの導入を推進し、飲食店などの店舗はお客さんがいなくなったこともあって営業自粛をするなど、さまざまな支障をきたしました。そうしたコロナ禍が続く中、それほど大きな影響を受けずに済んだ業界もあった一方、企業存続のかかった深刻なダメージを受けた業界もありました。

特にひどかったのが、ホテルや航空会社、旅行会社といった観光業やファミリーレストランなどの飲食業、対面での販売が中心だったアパレル業界などです。

そして、その深刻さは企業にとっても、もはやこれまでの雇用を維持できる余裕のないレベルになり、派遣社員や契約社員といったいわゆる非正規社員だけにとどまらず、リストラの波は正社員にまで及ぶようになりました。日本全体でも、2021年4月の時点で厚生労働省が発表したコロナ禍で解雇された人数は10万人以上に登ります。

そして、2021年5月から正社員のリストラがさらに進むと読んでいる評論家も多く、実際に希望退職を募り出した企業も数多く発覚しています。もし自分の会社が希望退職を募った場合、まだ会社にしがみつくのがよいのか、希望退職に応募するほうがいいのか、いったいどちらを選択するべきでしょう。

希望退職制度とは?

まずは希望退職という制度について確認してみます。安易に従業員を解雇することが難しい日本の企業が、リストラを敢行する場合に最初に取られることの多い手段が、この希望退職の募集です。

各社員ごとに適用される通常の退職金の額に、会社が定めたある一定の割り増しがなされた退職金を加えて、さらに再就職が有利に行えるように企業の負担で転職エージェントのサービスを受けられるようにするという特典を付与することで、他社への転職という形での再就職を積極的に促します。

その企業の将来の業績などに不安を抱く社員の中で、より待遇の良い条件で転職できそうな優秀な社員にとっては良い制度だと言うことも可能です。ただし、企業がその必要性に迫られてせっぱつまった状況で行われる募集であることが、一般的な早期退職制度とは異なる部分です。

業績が悪化し、固定費であるサラリーや福利厚生にかかる経費を縮小するために、期間を決めて必要であると計画された人数を確実にリストラする目的に沿って行われるため、応募者数が募集人数に達しなければ、希望退職に応じる意思のない社員に、さまざまな形での退職勧告がなされることもあります。

こうした場合、企業側には事業の悪化による経営のスリム化や、別業態への転換のためにスキルを持った人員への入れ替えなどの理由があるのですが、同時に多大なリスクを背負うことにもなります。最も大きなリスクは、希望退職の対象にならずに会社に残った社員の士気が一気に低下することでしょう。

こうした希望退職の募集は一度きりとは限りません。さらなる業績悪化が続けば、第2弾、第3弾の希望退職が募られる可能性は残されます。すると、社員の間では次こそは自分の番が訪れるのではないかと疑心暗鬼に陥り、安心して働くことが難しくなります。


特に企業に勤めるサラリーマンにとって、最も関心のあるトピックは人事に関することです。誰が希望退職に応じたかというような情報はすぐに社内で共有されます。その際に、会社側が退職する社員へ不誠実な対応を取っていると、瞬く間にうわさになり、ロイヤルティーやモチベーションの低下へとつながります。

そのリスクを負ってでも実行するわけですから、会社側の希望退職の募集は、是が非でも目標人数をリストラする覚悟で行われる諸刃の剣なのです。

リストラによる不利益を被らないために

実際に会社がそうしたリストラを発表する時点では、もう大筋の人員削減計画はできていると見るべきです。では、そうしたリストラによる不利益を被らずに、転職をするにしても、できうる限り有利な条件で転職できるように備えるために必要なことはなんでしょう。

やはり、社内の情報に日頃から敏感になり、事態が後手に回る前に事前に気付いて、他の同僚よりも早く転職を決めることがベストな心構えでしょう。さらには転職市場で高く評価されるために、現業務における一定の成果や実績を日頃から積んでおく必要もあります。まさに備えあれば憂いなしという言葉に集約されます。

一般的に、強引なリストラ施策が取られる時、現場は往々にして混乱するものです。経営陣の一部の思い付きや、事前の根回しもなく限られた執行メンバーのみで決めたような希望退職の募集である場合は特に、経営陣の別な一部や現場を統括するマネージメント層からはその命令への反発が生まれ、迅速な実行に障害となるケースもあるでしょう。

早く転職を決めるほうが有利

会社が希望退職を募る必要性に迫られており、生き残りのためには絶対に必要なリストラであるという社内コンセンサスが浸透していなければ、全社で一丸となって推進することは難しいでしょう。そういう場合では、リストラのために希望退職を募る動きがあるという情報は、反発を感じる層から現場の社員に漏れてしまいがちです。

日頃から社内情報を収集していれば、必ずレーダーに触れる話でしょう。実際に会社の将来の業績を予測し、自ら会社を去る決断にも役立ちます。 よって、今よりも給料が上がり、キャリアアップにもつながる転職をするためには、誰よりも早く転職を決めるほうが有利なことは間違いありません。

日頃からそうした情報に敏感で、実績を積むなどの準備も怠っていないタイプの社員であれば、希望退職という制度を有利に使うことが可能です。転職エージェントに登録してプロフェッショナルなアドバイスやサポートを受ける費用は、会社が負担してくれます。

ですので、費用に関しては会社が払う段階まで待つ必要がありますが、転職エージェントの担当者と事前に話をしておくことは可能でしょう。そして、いざ会社がリストラを敢行するという段階に入れば、いち早く希望退職募集に応募し、さまざまな特典を得た上で、条件のより良い会社への転職も果たすという一挙両得を期待できます。

希望退職の募集が発表されてから、他の社員と一緒に混乱の中で応募する形になっても、キャリアアップとしての転職先を奪い合う形になってしまいますので、時すでに遅しという状態になってしまいます。このコロナ禍では、業界を問わず、どんな業績悪化を招く事態が起きないとも限りません。

会社からの好待遇での引き留めもある

サラリーマンである以上は、常にそうしたリストラのリスクがつきものであることを自覚し、平時から備えておく慎重さが求められます。希望退職の募集には期限がつけられることが常です。その始まりにロケットスタートが切れれば、期間を最大限に活用できます。

さらには、希望退職に応募して、すぐに転職先も決められそうだという状態が経営層から把握されると、それは高度なリスク管理を発揮している優秀な社員であると認識され直し、会社からの好待遇での引き留めの動きにつながる可能性すら出てきます。

会社の業績を予想して、希望が持てるなら残るもよし、将来の見通しが悪いなら転職を貫くもよし、個人の選択肢を増やせることはその後のキャリアにおいて非常に貴重なことです。