他の法律事務所に移籍を考えたりインハウス(企業内弁護士)へ転身することを検討している弁護士の中には、情報収集や転職活動の仕方で悩んでいる方もおられると思います。

特に転職エージェントやヘッドハンターを利用すべきかどうか?、迷われている方も多いのではないでしょうか? 弁護士が転職エージェントを活用することには、さまざまなメリットがある一方、注意すべき点もあります。

弁護士の転職・移籍にはどのようなパターンがあるか

弁護士の転職、あるいは移籍には2つのパターンを考えることができます。

ひとつは所属する法律事務所を移籍することです。移籍を希望する理由は、扱う案件の幅を広げたいといったことから、特定領域に関する案件を集中して担当したい、より好待遇を求めてなど前向きな理由だけでなく、事務所内の人間関係や勤務環境で移籍を検討する場合もあります。

近年は企業法務と一般民事の別なく、規模の拡大を図る法律事務所が増えており新卒・中途にかかわらず人材を積極的に募集する事務所も増えています。

もう1つのパターンは企業内弁護士(インハウス)として企業に転職するというものです。かつて企業内弁護士は少なかったですが、近年企業内弁護士を採用する企業は増える傾向にあり、弁護士がキャリアの選択肢とすることが珍しいものでなくなってきています。司法修習した後、まず大手弁護士事務所で一定の経験を積み、事業会社のインハウスに転身するというのがひとつのキャリアの流れとして定着してきているのは確かです。

大手法律事務所と比較した場合、収入面では見劣りすることが多いものの、ワークバランスが比較的取りやすい上、クライアントからの委任ではなく主体的立場で企業の事業に関わることができるなど、弁護士サイドからみたメリットばかりでなく、企業側としては事業の複雑化によりリーガルの重要性が増していることが、企業が企業内弁護士を雇うメリットにもなっています。

グローバルメーカーや商社、金融やIT企業での企業内弁護士の需要が高まっており、この流れは今後継続していく見込みです。

弁護士が転職エージェントを利用するメリット

弁護士の場合、仕事の性質上比較的狭い世界の中での縦横の繋がりが多く、実際多くの方が紹介やコネを得ることで移籍先や転職先を決めていらっしゃいます。しかし、転職エージェントを活用し、移籍先や転職先を探すことには、紹介やコネにはないメリットがあることも確かです。

転職エージェントを活用する最大のメリットは、転職や移籍に関する相談を客観的な立場で行うことができるという点です。弁護士の方が事務所の移籍を考えたり企業内弁護士として転職しようとする場合、その情報を誰から得るのか、また相談する相手を探すことが困難です。

上司や同僚だと現在の職場での評価や人間関係が気になるところですし、家族友人の場合、弁護士という業務に関する知識がないと、自分が何に悩んだり考えているのか、理解を得ることが難しいことは確かです。家族が強硬的に反対することも珍しいことではなく、なかなか建設的に転職・移籍の相談ができる環境が身近にないというケースは少なくありません。

転職エージェントのメリット

このような問題をクリアし、転職市場や動向の情報に基づき弁護士ご本人のキャリアを客観的に理解し、アドバイスしてくれるのが転職エージェントです。

転職エージェントは積極的に弁護士を募集している事務所や企業の情報や、そこで求められるスキルや報酬相場といった情報を把握し、個々の弁護士のキャリア支援に有益な情報提供が可能です。人間関係のしがらみに影響することなく本音で相談することも可能です。

転職エージェントを利用することのもうひとつの大きなメリットはキャリアの選択肢を広げることが可能になるということです。これまで弁護士は個人のコネクションを利用して転職・移籍を行うことが一般的でしたが、情報が自分自身のネットワークに限定されてしまうことやコネであるがゆえに条件面での交渉が難しいというデメリットもありました。

転職エージェントを利用することで自分自身のコネクション以上の求人市場を知り報酬相場を知ることができることが転職エージェントを利用する大きな強みとなります。特定のエージェントやヘッドハンターにのみ求人情報を公開している企業や事務所もあり、それらへの応募はエージェントを通じてしか行えません。どのようなキャリアの選択肢があるかを知ることだけでも、転職エージェントを活用するメリットは大いにあります。

選考の対策や条件交渉のしやすさも転職エージェントを活用する重要な理由となります。転職エージェントからレジュメのアドバイスや面接に際してのコツ、相手の面接官の情報等、事前に選考や面接が有利になる情報を得ることができます。

条件交渉に関してもコネクションを利用した転職・移籍の場合なかなか本当の希望を切り出すことができない、ということがありがちですが、転職エージェントという第三者を介することにより、希望を前面に出しての交渉がしやすくなります。

転職エージェントを利用する際注意したいポイント

以上、弁護士が転職エージェントを利用するメリットは数々ありますが、一方で利用に際しては注意して戴くべき点もあります。決してすべてのエージェントが信頼できるわけではないというのもひとつの現実として把握しておく必要があるでしょう。複数のエージェントと会ってみた上で、より信頼できる相手を選択することがベターと言えます。

まず、エージェントの中には相談者ファーストではなく、自身の利益を優先するようなスタンスで活動する者もいます。弁護士の転職エージェントはフィービジネスとなっており、相談者が企業や事務所に転職・移籍した場合、年俸の35%程度を報酬として得ることが通例となっています。

また紹介した方が入社・入所して初めてフィーが発生する仕組みになっています。そのため、エージェントの中には自己の利益を優先し、強引に応募を促してきたり、求人の悪い面を隠そうとする、意思決定を急かすといった傾向が見受けられる場合があります。意思決定を強要されるような感じがある場合は他のエージェントに切り替えた方が良いでしょう。

求人情報や業界にどれだけ精通しているかも、転職エージェントを選択する重要な基準です。その企業や事務所が人材募集する背景や内部情報といった、求人票からは読み取れない情報をどれだけ持っているかを確認することが大切です。

転職エージェントの中には領域を限定しない人もいますが、弁護士の場合、専門性が高いことを鑑みれば、領域に特化しているエージェントの方が望ましいと言えます。キャリアや求人、条件面に関係する情報に精通しているかどうかを確認しましょう。

そして実は最も重要かもしれないのが「相性」です。エージェントのスタンスやスキルが十分であっても話しづらかったり好きになれない場合、転職や移籍の活動は上手くいきません。より良い転職やキャリアチェンジのためには本音で率直なコミュニケーションを取ることが大切となります。

転職エージェントを有効に利用するためには、本格的な転職活動を開始する以前にエージェントとの関係を構築しておくことが重要です。多くの人が希望する求人は早期に充足してしまう可能性が高く、タイミングを逃さないためにも、先んじてエージェントとの関係を構築しておくことが必要になるわけです。転職や移籍を考え始めたら、まず転職エージェントに相談してみると良いでしょう。

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